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ピリオド楽器によるベートーヴェン~その可能性(弦楽四重奏曲)
 以前から指摘されていることだ。ピリオド楽器によるベートーヴェン、交響曲等のオーケストラの録音は次々と出るのに、弦楽四重奏やピアノ・ソナタの分野では、なぜか状況が全く異なっている。
 ピアノ・ソナタは初期・中期の作品がある程度揃っているだけまだ良いが、弦楽四重奏など、録音自体が数えるほどしか出ていない。どちらのジャンルも最重要の後期作品はほぼ手付かずといった具合。寂しい状況と言わざるを得ない。

 人材の層の薄さ?楽器の優劣?…よく言われる話だが、どちらの根拠もかなり遠まわしなこじつけで、単純にレコード会社が売れると思っていない、それだけの理由で録音点数が少ないものと考える。数こそ少ないものの、これらの分野でも、ピリオド楽器演奏の可能性を確かに感じさせる、きらりと光るCDが存在するからだ。可能性のある、未開拓の分野…管理人はそう考えている。

 まず次のCDを聴いてみてはどうか。先入観にとらわれず、演奏に対して虚心に耳を傾けることが大切だろう。基本的な話ではあるのだけど。

 今回はとりあえず弦楽四重奏を。
beethoven-sq1.jpgベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番 ハ短調、第9番(ラズモフスキー第3番) ハ長調
シュパンツィヒ四重奏団
[ARS MUSICI AM 1281-2]

 ピリオド楽器の良いところが全面に出た、真っ先に聴くべき録音。速いテンポ設定と直線的な演奏解釈に、ややざらつきのあるストレートな音色が推進力と重みをもたらしている。
 細部の音色への気遣いもかなり行き届いており、これはかなりの手練の仕業。ブリュッヘン、ガーディナーが交響曲で見せた成果を目の前にありありと思い起こさせるような、素晴らしい仕事。
 スピードと重みを両方備えていることが特徴で、例えば、"盤鬼"平林直哉氏が著書などで紹介している、史上最速のラズモフスキー第3終楽章(ニュー・ミュージックSQ[Bartok Records])の演奏を聴いて「スピードが速くて演奏者も熱いのは分かるけど、何か表現が上滑りしてないか?」と思う人にお勧め。これに比べればシュパンツィヒQ盤のテンポは遅いが、体感速度というのか、推進力も含めた感覚で、シュパンツィヒQ盤のほうが快適だと感じる人は多いのではなかろうか。数字や技術では割り切れない、こういう所がピリオド楽器演奏の魅力の一つではないか。


 それにしても手練とはいえ、1枚目の録音でいきなり「ラズモフスキー第3」とは。第1ヴァイオリンはアントン・シュテック。イェド・ヴェンツ指揮、ムジカ・アド・レーヌムでコンマスをしていた時期があったり、ロバート・ヒルと共演でCDを録音していたり、ムジカ・アンティクヮ・ケルン関係の人なのかなと漠然と思っていたが、「シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ集[MD+G]」のライナーノートで経歴が判明、やはりムジカ・アンティクヮ・ケルンのコンマス兼ソリストからキャリアが始まっているようだ。私の所有するMAKのCDでは見かけたことないのですけどね。)現在はコンチェルト・ケルンのコンマスの模様(現在の活躍ぶりは、「SEEDS ON WHITESNOW」さんの「熱狂の日 2005」のエントリで確認できます)。引く手あまたなのも分かる、一昔前ケルン系の団体によく見られた特徴(エネルギー感のある音色とやや刺激的な演奏解釈)を色濃く残している。

beethoven-sq2.jpgベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1盤 ヘ長調、第4番 ハ短調
モザイク四重奏団
[naïve E 8899]

 派手な身振りが全くないため1枚目には向いてないとも思うが、細部まで練りに練った感のある、大人の演奏。ヴィブラートを抑えた音色、勢いよりも品格を重視したような態度…。細かい解釈はかなり異なるが、旧東ドイツの演奏団体の録音と、印象が似ているような気がする。彼らは東ドイツがなくなった今、そういう立ち位置を目指しているのではなかろうか?そんな風に考えさせる、地味ながら気になる録音。

<その他の録音>
・エロイカ四重奏団[harmonia mundi France]
 第10番、第11番、第16番を収録。16番はピリオド楽器による後期作品の唯一の録音と思われるが…。演奏やや勢いはあるが、その分、どの曲も細部の掘り下げが不足。楽譜を表面的に弾いているだけのように感じられる。「だから自分達はベートーヴェンを弾く」という主張がもっと欲しい。

・ターナー四重奏団[harmonia mundi France]
 ヘレヴェッヘのシャンゼリゼ管弦楽団のメンバー。第1番~第6番を収録。 透明感、演奏解釈など、全体にピントが甘いように感じられる。印象としてはやや弱いという感じが否めない。

 文章量からも分かるとおり、管理人のお勧めは最初の1枚。補助的にモザイクSQの1枚といったところ。
 管理人は、他にモザイク四重奏団の第5番・第6番の録音以外、ピリオド楽器での録音を知らない。フェステティーチQあたり、ベートーヴェンに手を出してくれないものか。後期作品、特に第15番や大フーガの録音を望むところだ。
 ピリオド楽器演奏であれば、後期の解釈では現時点で比べるもののない高みに達しているアルバン・ベルクQ盤[EMI]をも超えるものが出るのではあるまいか?管理人の夢想するところである。

beethoven-sq3.jpgベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15盤 イ短調、第16番 ヘ長調
アルバン・ベルク四重奏団
[EMIクラシックス TOCE-13087]

 晩年のベートーヴェンが達した、恐るべき高み。言葉で表現しようとしても全てが陳腐になってしまう、音楽という枠すら軽々と飛び越えてしまうような純粋な思念体の塊が見え隠れする、そんな曲を、シャープな、抑制した音色で孤高な雰囲気の中に凝縮。たった4人から限りなく広がるスケール感といったら。20世紀のベートーヴェン演奏の粋が結晶化した演奏。
 この演奏を概念から覆すような演奏が、ピリオド楽器演奏から出てほしい…
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コメント

トラパありがとうございます。
ベートーヴェンのピリオド・アプローチの中でも、ピアノソナタの後期と弦楽四重奏はまだまだこれからですね。これら2つは、交響曲のように商売にならないという点に加えて、奏法や楽器がモーツァルトやハイドンの延長で捉えきれないという事情もあると思います。シューベルトの弦楽四重奏曲、例えば死と乙女のピリオド系録音を見たことがないというのも、このあたりの事情が関係していると思います。
現時点では、ピリオド系のエッセンスを取り入れた後期録音としては、古典四重奏団のまとまった録音がオススメできるのではないかと。実演では出来不出来が大きい彼らですけど、昨年東京芸大で聴いた大フーガは、とても貴重な経験をさせてくれました。

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