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楽美術館の特別鑑賞茶会。(京都市)
 千利休が黒楽・赤楽の楽茶碗を作らせた、という話はよく知られているけれど、千利休の指示のもと、実際に楽茶碗を作った「長次郎」という職人の末裔が、その名も「楽」家(※実際には「樂」の字を使用)、いわゆる楽焼の本家として、現在も存在している。今でも京都で代々楽茶碗を作っていらっしゃる。

 シチュエーションによっては「楽茶碗」といったらこの楽家の方が作ったお茶碗のことを指していることもある位。知っている人は知っているけれど、知らない人は知らない話かとも思い、基本的なところから書いてみた。
 楽美術館(京都市上京区)
 この楽家、今でも京都の街中にあるんだけど、お家に隣接して「楽美術館」が設けられていて、初代・長次郎、3代・道入(ノンコウ)をはじめ歴代当主の楽茶碗などが展示されている。

 が、さすがはお茶碗がメインの美術館。美術館の魅力はそれだけにはとどまらない。有料ではあるが、時折開催される「手に触れる楽茶碗鑑賞会」で美術館の所蔵品、つまり楽家歴代の楽茶碗を手にとって触らせてもらえたり、年数回の「特別鑑賞茶会」では、現在の当主、15代楽吉左衛門氏のトークを楽しみながら、あまつさえそういうお茶碗で実際にお茶をいただけてしまったりするのである。ちゃんとコネなしで誰でも参加できる。当たり前のことかもしれないが、そういう所がきちんとしているのは有難い。

 …というわけで、そんな貴重な機会があるならば行ってみるに限る。今回はその「特別鑑賞茶会」に行ってみた話。行ったのは今年の3月のこと。

 「有料」と書いたけれど、特別鑑賞茶会の参加費は7,000円(税込)。なので、行こうと決断するまでには結構時間を要した。
 が、いざ予約してみようとすると…これが結構大人気で。茶会のちょうど1ヶ月前から予約受付が始まるんだけど、最初、12月の茶会に予約の電話を入れたときは、予約開始当日の12時過ぎ位に電話したにも関わらず。既に予約は満杯。当日直前にキャンセル待ちの電話も試みたが、キャンセルも出ず…。仕方なく、次の機会(3ヶ月後)に改めてチャレンジ。予約開始日のオープン直後に電話を入れ、ようやく予約に成功といった次第。

 以下、実際のお茶会の様子。


 管理人が参加したのは2009年の3月、「花のかんばせ」という展覧会と同時期に開催されたお茶会。この日は開始時間の直前に美術館に入ることになったので、受付隣にあるロビーのような待合室のような部屋には既に開始を待つお客さんで一杯。特別鑑賞茶会の日は開始時間が11:00~、12:00~といった具合に一日のうちに3~4回お茶会が開かれるみたいなんだけど、管理人が入ったときの参加人数は全部で19人。割と多めな感じ。

 そのうち女性は16名、男性は3名(管理人を含む)といった比率。参加される方も特に年配の方に偏っているという訳ではなく、管理人と同世代、もしくは近い方もちらほらといらっしゃるかなという感じ。なお、女性はほとんどの方が和服、しかも明るい華やかな柄の和服姿。

 これで想像がつく人は想像がつくと思うけれど、参加されているのは大半がいわゆる"手習いでお茶を習っている"方、それに随伴のセンセイが少々といったところと推察。要するに、茶人然とした方や骨董好き・骨董マニアが大挙して押し寄せるようなお茶会ではない。美術館のイベントとはいえお茶会はお茶会、せっかく作った華やかな柄の和服、確かに実際にお披露目できるいい機会ですわねぇ。
 そういう状況を察して、落ち着くといえば落ち着いた。美術館とはいえ、あの楽吉左衛門氏と実際に顔を合わせるようなお茶会。参加するのは練達の方とかセンセイばっかりかも…なんて心配もあったもんだから。集まった顔ぶれを見て、思ったよりも普通の方が参加するんだなと一安心。対して、管理人以外の男性二人は、どちらも年齢的には自分よりかなり上のほう。そして、(専門家というよりはアマチュアとして)かなりの骨董好きという雰囲気。

 服装は、管理人は事前に予想しかねたので、この日は何となくスーツにネクタイ姿で参加。こういう迷ったときの服装は男性のほうは楽といえば楽かもしれない。実際にはネクタイ締めるほどのカタい席でもなく、他の男性の参加者は開襟の縞のシャツ等にナチュラルな素材のジャケットを合わせて、といった感じで、その位のカジュアルさ加減が確かにちょうど良さそうかなと感じた。女性のほうだって普段着で参加している人が少数いらしたけれど、傍目から見ていても管理人的には特にそれが気になる場面は別になかったし。ただ、大勢の和服姿の中で普段着姿がぽつんと浮く、というシチュエーションにハマる可能性は結構ありそうかな…。

 それと、やっぱりお茶会なので参加者が懐紙を持参することが前提。普段着の場合でも懐紙だけは忘れないように。普段持ってない人も何とか調達して行きましょう。管理人は懐紙を持っていなかったので、隣の方からお借りするハメに。あの時貸してくださった方、ホントに感謝してますです…

 待合室のような部屋を見渡すと、何人かが部屋の一角を見つめ、懸命にメモを取っている。そこには、その日に使う茶碗や掛軸などの道具類を列記した書状、いわゆる「茶会記」がしたためられている。皆、会記の内容を手持ちの手帳に、皆が皆ペンで転記している。一枚の書状なので、写真にでも収めれば一発で情報取得完了という気もするが…しかし空気的に写真を撮るのもどうかと思われたので、管理人も中に混ざって鉛筆でメモを取ることにする。主茶碗のほかに替茶碗が5つ、計6つの楽茶碗という構成もさることながら、棗や茶杓といった木工品に至るまで楽家代々の作品、「樂」の字の掛軸と、楽づくしのお茶会という趣旨が徹底している。

 …そうこうしているうちに開始時間に。いよいよ茶室に入る訳だが、予想通り、正客をめぐっての静かな戦いがここでも展開する。もちろん「お正客になるのはちょっと遠慮♪」という消極的な方向での展開。先頭で入った方からこぞって後ろの方に座る光景といったら(以下略)。そんなこんなで結局管理人は正客の隣、2番目の席に…。作法的なことは知らんといったら知りません。例のごとく適当に合わせてお茶を濁すものの、さすがに終始緊張。

 とはいえ、楽しむためのお茶会なんだし、マナー的なことは余程のことがない限り注意は受けないとは思います。指輪や腕時計をつけたまま茶碗を触らない(器が傷つくおそれがあるのでNG[厳禁])とか、器を拝見するときは必ず両手で持ち、高く持ち上げない(落として割れる可能性があるので厳禁)とか、骨董品を扱う上での基本的なところがちゃんとしてれば。

 さて、肝心のお茶会の話。亭主はもちろん十五代楽吉左衛門氏、本人。皆がお茶を頂いている小一時間、吉左衛門氏のトークを楽しむことができる。
 大寄せの茶会のため、お茶は点出し(裏の水屋で点てて出される形)で供された。はじめの茶杓の確認など、お点前を担当されていたは吉左衛門氏の奥様。ご夫婦でお茶会というのは何かいいなあ。

 楽吉左衛門氏は、写真で見た先入観や、その前衛的な作品の数々で「岡本太郎の"バクハツだ"みたいな人」「頑固一徹な職人然とした剛直な人」という印象を勝手に持っていたが、本人を実際に目の前にして受けた印象はかなり違った。間違っても「バクハツだ」のような押しの強さは感じられない。
 清潔感のある着物の着こなし。上品で軽妙なトーク。繊細でセンスの良い言葉遣い。最近髪型を変えたというその坊主頭ですら清潔感を感じさせる。
 一言で言えば"アーティスト"。それも「自分達と同時代のアーティスト」という雰囲気が漂っていた。

 この日の主茶碗は、鶴の模様があしらわれた九代・了入の黒楽茶碗。そして、管理人が実際にお茶をいただいたのは亀の絵があしらわれた十代・旦入の赤樂茶碗。この十代の茶碗は文政九年(1826年)に焼かれたという記録が残っているとのこと。180年ものの楽家の楽茶碗。緊張はするがいい経験だ。

 これらの他、十一代・十二代(絵付は十三代)・十四代・十五代(当代)と、歴代当主のお茶碗でのお茶会。自分が飲まなかったお茶碗も、自然な流れで全て手にとって拝見することができた。正直、鶴だの亀だの、手捏ねのお茶碗で高台の糸切の後を再現しただの、江戸後期だなあと思わせる装飾的な要素は管理人の興味の対象外だが、さすがに高台の土の味は一つ一つ味わい深い。同じ赤楽でも土の色からして一つ一つ全然違う。

 この中で管理人が最も魅力を感じたお茶碗は、実は十五代(当代)のお茶碗。この日の十五代のお茶碗はよく見るあの前衛的なやつではなく落ち着いたデザインの赤楽茶碗だったが、この茶碗、実にしっくりと手に馴染む。両手にスポッと収まる感じが何ともいえない。手に持ったときの自然さは、この日の茶碗の中で図抜けていた。あの前衛的な茶碗もこの感覚が反映されているとすれば…。想像が広がる体験だった。

 それにしてもだ。やっぱり正座には慣れてなくってねぇ…。この日は、同時期に大阪の国立民俗学博物館で開催されていた"千家十職×みんぱく"展の話中心のトークだったんだけどね。興味深い話もあったみたいなんだけど、足が痺れて痺れて…。話の後半は残念ながらあんまり聞けてないです。残念無念。

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コメント

お茶会参加されたんですね。うらやましい!
特別展行きたいのですが7日までなので、残念!
手にふれる楽茶碗鑑賞会今月20、21日なので行ければと画策中です。

三井記念美術館「三井家伝来 茶の湯の名品」
さすがの名品名物ぞろいです。
上京される予定がありましたらぜひ!

後編が待ち遠しい!

タッカー 様
 己を省みず、無謀にも参加して参りました…でもいい経験になりましたよ。ちゃんと楽しめましたし。
 手にふれる楽茶碗鑑賞会のほうにも実は以前に一度参加したことがあって、そのときは五代・宗入作の黒楽茶碗を拝見しました。文字通り、自分の手で持って。顔を近づけるとほんのりと抹茶の香りがして、「生きた骨董」ってこういうものかと実感ありましたよ。お茶会と同じ茶室で拝見するんですけど、お茶会はお茶会の、手にふれる…は手にふれる…の良いところがあるので、どちらに参加しても楽しめると思います。本文でも少し触れますけど、「手に触れる…」はお茶会のほうと違って長時間正座しなくても良いですからねぇ。

後編ありがとうございます。
ひそかに待ってました(笑)。

茶室の中で吉左衛門氏のお話、各代のお茶碗に触れられること、
まさに至福の時間ですね。
小生は11月に佐川美術館の楽美術館室での「ガムラン茶会」に
参加してまいりました。「インドネシアンプリミティブアート展」のイベントとして
おこなわれたものです。京都の楽美術館のお茶会の予行演習もかねて(笑)
ガムランを聞きながら当代のお茶碗でお茶をいただきました。
立礼でしたので足はしびれずにすみました。

>タッカー 様 
 ガ、ガムラン茶会…何でしょうその組み合わせ。ミステリアス…佐川美術館の茶室、一度見ましたけど、あそこでお茶頂いたんですか?いいですねー。
 そのシチュエーションなら、当代の茶碗も例の芸術的なやつですよね多分。いいなあ、どんな飲み心地なんだろう…。
 お返事遅れてしまい申し訳ありません。ここのところどうも仕事から帰ってパソコンに向かう余力が…。エネルギー不足ですかね。

言葉足らずでごめんなさい。ガムラン茶会は水辺の茶室ではなく
ロビー(水面からの光が天井をとおしてさしこむ所)の立礼席でおこなわれました。
「インドネシアンプリミティブアート展」にあわせて制作された当代のお茶碗で
いただきました。お茶をたてる人も運ぶ人もインドネシアの民族衣装でした。
3月までやっているようですよ。

>タッカー 様
 残念ながらガムラン茶会は機会を逃しましたが、面白そうな試みですね。歴代の楽家の仕事はともかく、当代の吉左衛門氏の仕事はあの見た目の割に(笑)実用面も本当によく考えられているようで、非常に魅力を感じます。

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