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東山文化の茶の湯を資料で学ぶ。 -君台観左右帳記、御物集成-
 茶の湯の歴史を語るとき、今の教科書では足利義政の東山文化の頃に広まった茶の湯が、現在の茶道の師範が行うような茶会とさも同じような形式で行われていたように語られるような印象が強い。

 しかし、今広まっている茶の湯のイメージと、東山文化の中で楽しまれていた茶の湯のイメージは、実際には随分異なるようだ。

「君台観左右帳記、御飾書 -茶の湯の古典[1]」
(村井 康彦 校訂・訳注 世界文化社 s58出版)

 当時の文化・芸術に関するプロデューサー的な役割を果たした足利将軍家の同朋衆、能阿弥・相阿弥の手になる「君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)」。東山文化の芸術を知る上での決定版として知られる。
 昭和58年出版のこの本は原文・書き下し文・口語訳と全て揃っているうえ、本の中で解説される絵画や工芸品のカラー写真もふんだんに掲載されていて、とても参考になる。ありがたい。

 東山文化の頃は「お茶会」といっても、それは(中国伝来の)絵画や美術品の鑑賞が主目的だった(=お茶を楽しむのはあくまで二の次の話だった)というのはよく書物で見るところ。少なくとも、千利休が大成した「わび茶」のように精神性を重んずる向きはまだあまり表面化していないようだ。

 こういう時代の茶の湯を知る場合、千利休のわび茶を基礎とした現代の茶の湯のイメージはかえって邪魔になる場合が多い。伝統の手垢にまみれていない当時の生のメッセージにふれると、当時の空気感がやはりよく分かる(ような気がする…)。


 前半は有名な画家のリストがメインで、画家ごとに「上々々」や「中上」などランク付けしてあるのが特徴的。
 画家とはいっても、冒頭「上々々」にランクされているのは徽宗皇帝(北宋の第8代皇帝)。そうか芸術面を引っ張っていた皇帝というのもいたのだなと改めて考える。
 リストアップされているのは全員中国の画家で、日本の絵はまるで眼中にないという感じ。掲載されている絵画の写真を見てもいかにも中国的な感じで、これが書院に飾られる姿はなかなか想像しにくい。

 続いて道具類の説明。茶碗なども少し説明されているが、全て曜変天目だの建盞天目だの、唐物の天目茶碗オンリー。日本のやきもの関係は茶入れの部に「くにやき」と一括して言及があるのみで、唐物優先のスタンスは最後まで徹底している。
 古銅(唐物の古い銅器)に一項目があてられているのに対し、青磁に関する言及が意外とみられないあたり、この頃の書院の飾りと仏具の三具足(香炉・燭台・花立)とのつながりが色濃く感じられて興味深い。

 後半は書院飾りの話。やはりここでも、掛け軸の三尊形式をメインにした飾り方や、飾り道具に三具足を置くとか置かないとかの言及が多く見られるところ、かなり仏教世界という感じで興味深い。おそらく、きちんと飾った当時の書院のイメージは、現代の一般的な「茶道」のイメージで想像するより「中国趣味のお寺」のイメージで想像するほうがかなり近いだろうと感じられた。

 裏千家、表千家、武者小路千家と、何だかんだいってお茶の世界は今でも千家全盛といった様相だが、いまの茶の湯が「君台~」のようなこういうものをベースに成り立っているということを学ぶことは、単にお茶の知識を深めるだけでなく、現在お茶の世界の決定的なイメージとなっている「千家」の固定観念から自由に羽ばたいてみる、ひとつのきっかけにはなるかも。

gomotsu1.jpg「御物集成」
(淡交社 s47出版)

 もちろん、東山文化当時の道具そのものを色々と見てみるのも一つの手段。
 「東山御物(足利将軍家所蔵の宝物)」と「柳営御物(徳川将軍家所蔵の宝物)」の2巻仕立てに分かれており、それぞれの御物が写真解説付きで紹介されている。分量的には絵画中心で、工芸品のボリュームはかなり少なめ。

 元々東山御物だったものが、信長、秀吉を経て柳営御物となったものも比較的あって、結果的に東山文化を学ぶのに格好の本になっているように思われる。例えば、足利義政が命名・所蔵した茶入「初花肩衝」は柳営御物の巻に収録されている。

 どちらの御物にも収蔵されている「牧谿」の絵画は、知識なく眺めていても、不思議な画面構成が興味深い。


※今回の2種の本は非常に古い本のため当然のごとく絶版。管理人はいずれも古本で入手したもの。「君台~」の世界文化社版は残念ながら福井県立図書館でも見られない。原文も日本語訳も非常に読みやすいんだけど。「御物集成」は県立図書館の大型本コーナーで閲覧できる。興味ある方は閲覧されたし。
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