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岡倉天心「茶の本」、日本語訳3種 ~翻訳ごとに結構異なる味わい。
 お茶というより東洋思想全体が語られていることは有名だが、お茶の話もかなり斬新でスケールの大きな話を展開した名著。明治時代にこんな本を書いた見識には、ただひたすら尊敬の念を覚える限り。

 「お作法がどうのこうの…」とか、「お正客がどうのこうの…」とか、"茶道"的な細かい話には一切目もくれない。時代は中国、お茶の起源にまでさかのぼり、「唐のお茶(団茶)」「宋のお茶(抹茶)」「明のお茶(煎茶)」とその精神的な背景、そしてそれらの「日本伝来」との関係といった、臨済宗の栄西による抹茶の日本伝来「以前」の話、通常の茶道の入門書では全く触れられることのない中国の茶の話にかなり重点が置かれているなど、著者のグローバルなものの見方が文章にストレートに表れており、通しで読んだだけで広い視野で世界を眺めたような気分にさせられる。

 ところでこの「茶の本」、元々はアメリカで出版されたもので、原文は全て英語で書かれている。岡倉天心本人による日本語訳が残されていないのか、色々な方の日本語訳が出回っており、どの本も比較的容易に入手できる状況。色々な日本語訳に同時に接することができる。

 何回も繰り返し読む価値のある、中身のある作品。せっかくならもう1回読むときは違う訳で読んでみることをおすすめする。 基本的に書いてあることは同じ…はずだが、やはり違う翻訳を読むと印象もまた変わってくる。1冊読んだだけでは分かりにくかったニュアンスが分かることも多い。

 薄い文庫本1冊に満たない位のボリュームのうえ、7章仕立てで各章が独立した内容になっており、ちょっとした合間に読みやすいところも繰り返し読みに適している。

 以下は、読んでみた3種の日本語訳の本。いずれも現時点で容易に入手できる。


「新訳 茶の本」 岡倉天心著、大久保秀樹訳
[角川ソフィア文庫] 629円(税別)

 3つの中では最も新しい、2005年刊行。今風の少し会話調の入ったような文章で、雑誌を読むような感じでナチュラルに読める。各章の終わりごとについている、コラムのようなちょっとした解説も良い。第1章の英題「The Cup of Humanity」が「Cup of Tea」のもじりだという指摘とか、岡倉天心の洒落た感覚が伝わるような解説が親切。
 訳者の個性を通さずストレートに岡倉天心を読みたいという向きには最適と思われるが、現実世界での会話とあまりにも違和感がない文章のため、1回さらりと読んだだけでは呼んだ内容を右から左に受け流してしまうことも多いかも。

「茶の本」 岡倉天心著、立木智子訳
[淡交社] 1,262円(税別)

 日本語としての見た目のきれいさにも気を配った、丁寧な訳。感触が柔らかく、そういう意味では最も読みやすい訳かもしれない。淡交社(裏千家系の出版社)から出版されるだけのことはあって、汚さを感じさせる箇所がない上品な訳に仕上がっているが、その裏でブラックユーモアや駄洒落まで駆使した茶の本の別の一面が「無駄なもの」としてカットされているような気がしないでもない。

「茶の本【英文収録】」 岡倉天心著、桶谷秀昭訳
[講談社学術文庫] 840円(税別)

 直訳のような感じで言葉遣いもやや古く、体調が悪いと数ページ開いたところで眠気が襲ってくるような感じがするが、茶の本で天心が時たま展開するかなり辛辣なブラックユーモアを一番ストレートに感じられるのが良い。明治時代のアメリカはまだイギリス的な空気が結構あったのかねえ、などと想像するのも楽しい。管理人ははそこまで興味はないが、硬派な人向けに英語(原典版)の「茶の本」全文が入っている。掛詞(もしくはだじゃれ的ユーモア)を駆使するほどの岡倉天心の英語表現、調べれば役に立つことはあるかもしれない。
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