スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
J・S・バッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調」BWV582
 年末年始はやはり特別な曲が聴きたくなる。管理人はこういうときはやっぱりバッハ。第9とかニューイヤーコンサートも悪くないですけどね。指揮者がクライバーかアーノンクールだったらね。いやラトルでも良いんですが。…メータねえ。

 バッハだったら筆頭に挙がるのは「マタイ受難曲」?でも本当に重たい曲だし、今年はちょっと違うものにしたい気分。

 ということで、今年の年末年始に聴いたのはバッハのオルガン曲の代表作の一つ、
「バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582」。
bach-organ1-koopman.jpg演奏は、トン・コープマンの3回目の録音。
「バッハ:オルガン作品全集 第1巻」※パッサカリアの他、幻想曲とフーガ ト短調 BWV542、フーガ ト短調 BWV578「小フーガ」等収録。
トン・コープマン(org/1729-32年、ルドルフ・ガルレス・オルガン、オランダ:マーススライス大教会)
[テルデック(国内盤) WPCS-10597]

 バッハのオルガン曲には「トッカータとフーガ ニ短調(BWV565)」以外にも「代表作」と言えるような作品が結構あって、それぞれに余人の追随を許さないような素晴らしい点があって、どれが最高かはそのときの気分や状況によって違うのだけど、管理人は聴いたときの印象の重厚さ、曲の裏に控える圧倒的な深遠さからこの曲が「最高傑作」かも、と感じることが非常に多い。管理人がバッハの魅力の本質に初めて気付かされたのはこの曲。この曲から何を受け取るかは各人様々で良いと思うので、内容は秘密だけど、管理人にとって「人生の節目」になったことは間違いない。

 曲の形式は、大規模なオルガン曲には珍しく「変奏曲」の形を取っている。ただ通常の変奏曲と違い、低音部で演奏される主題が基本的なフォルムをほとんど崩さず終わりまで繰り返される(バッソ・オスティナート)のが特徴的。

 とにかく、最初から感じるのは最重量の主題に加え、他の変奏曲では聴くことができないその規模の巨大さ。この曲は理屈を四の五の説明するより一度聴いたほうがよく分かるので、興味のある人は一度聴いてみることをお勧めします。

 コープマンの演奏は旧録音のほうがコープマンらしかったとか色々意見はあるけれど、管理人は最新録音が一番好き。あのコープマンが一番「真剣に」取り組んでいるように感じられるから。コープマンではなく「バッハ」が見えてくる、最良の演奏と感じる。録音も一番好き(ただしグラモフォン[アルヒーフ]の旧録音でも遜色なく曲の魅力が味わえる)。


※ここから説明する細かい話は曲の本質とはあまり関係ありません(余談のようなもの)。

・低音主題の反復という構造は、若かりしバッハが実際に演奏を聴きに行ったブクステフーデ(1637頃-1707)の「パッサカリア ニ短調 BuxWV161」と同じ特徴。が、パッサカリアというとこういう低音主題の曲なのかいうとそうでもない。例えばヘンデルのパッサカリア(組曲第7番ト短調 HWV432、フランス風の表記でパッサカーユ[passacaille])は変奏曲ではあるもののあまり低音主題にこだわった感じはなく、パッサカリア全てにこういう特徴があるわけではない。Wikipediaで「オスティナート」を調べると、当時「シャコンヌ」と「パッサカリア」の区別は曖昧だったとか、結構いい加減。

・作曲されたのは1710年ごろ(東京書籍「バッハ事典」より)。バッハは25歳くらい、結構若書きの作品。ほんとかよ。

・色々な本で言われているが、古くはA.シュヴァイツァーの著書「バッハ」やカール・リヒターのようなちょっと昔の演奏家の演奏に見られるように、この曲は「最初は弱くppから始め、最後は強く演奏」と曲全体で大きなクレッシェンドを描くような解釈だったのだけど、ここしばらくは冒頭から大きな音量で演奏するのが主流。新しい解釈だと和音の軋轢の激しさが序盤から顕著なこともこの曲の特徴であることがよく分かる。
 この解釈が録音に現れたのはコープマンの最初の録音(83年)あたりが最初みたいだけど、コープマンの個性的な演奏解釈は師匠、グスタフ・レオンハルトの解釈を基礎に育ったもの。レオンハルトはどんなパッサカリアを演奏していたのか非常に気になるところ。録音には残してないみたいだし、実際どうだったのだろう?パッサカリアとフーガを休憩なしに続けざまに演奏し、1曲の巨大なパッサカリアに仕立て上げる手法は、コープマンがオリジナルなのだろうか?

・パッサカリアの主題の前半部は、実は他の作曲家の曲(アンドレ・レゾン[Andre Raison 1650-1719] 第2旋法によるオルガン・ミサ)からテーマを借用したものとのこと(出典:東京書籍「バッハ事典」)。一方、鈴木雅明は自身のバッハのオルガン曲集のライナーノートで「酷似している」という表現に留めている。
 レゾンの曲の実際の演奏がCDで出ているので、どうしても気になる、この曲の理解を深めるため、バッハの理解を深めるためには大切かも知れぬという人は聴いてみてもいいかも。(ただし、2枚組のうち目当ての曲の演奏時間は1分位ですよ。)管理人が聴いた感想では、確かに主題はそのまんまバッハのパッサカリアの前半(形式も"trio en passacaille"と指定されている)。ただ、曲の展開はフランスバロックのオルガン音楽そのもの(クープランとかグリニのミサ曲みたいな)で、雰囲気もかわいらしいというのが適当。曲自体も本当に短くて全く別物。あまりバッハに直接つながる感じではないかな?といった感じ。
bach-exlibris.jpg
「EX LIBRIS」THE MUSICAL LIBRARY OF J.S.BACH
(演)LA FENICE
[OPUS111 OP 30323(2枚組)]

※ちなみに鈴木氏のパッサカリアの録音は、オルガンの不均等な調律(ジルバーマン第2法)が100%生かされ、特異な存在感を示す。厳しさを増した不協和音が冒頭から連続する様は、初めて聴く人にはちょっとどうかとも思うが、非常に味わい深いのは確か。
bach-suzuki.jpg「トッカータとフーガ ニ短調 -鈴木雅明/バッハ・オルガン名曲集」
(プレリュードとフーガ ホ短調 BWV548、トッカータとフーガ ニ短調 BWV565、フーガ ト短調 BWV578「小フーガ」、パッサカリアとフーガ ニ短調 BWV582 他)
鈴木雅明(org/1742-44年、ヨアヒム・ヴァーグナー・オルガン、ドイツ:アンゲルミュンデ:聖マリア教会)
[ロマネスカ(国内盤)KICC-193]
関連記事
                

トラックバック ※ブログ管理人から承認されるまでトラックバックは反映されません

http://suralin.blog48.fc2.com/tb.php/107-57e62e99

コメント

この曲では是非ともヘルムート・ヴァルヒャの演奏を聴いていただきたいと思います。2回録音がありますが、いずれも圧巻です。バッハを体感・実感できます。

>松倉 様

 ヴァルヒャのパッサカリアは、巷の評判をたっぷりと頭に入れて聴いたせいもあるのでしょう、管理人はどちらかというと「頭で思ってた印象よりかなりあっさりしてるな」という印象を受けました。活躍年代の重なるカール・リヒターの(演奏効果・雰囲気をかなり盛り込んだ)演奏は勿論、近年の古楽系の演奏と比べても、訥々と、かなりソリッドにまとめてるなという感じで。
 こういう外見的に一見普通の演奏は得てして要注意で、グールドの81年盤のゴールトベルク辺りと同様、もっと人生脂が抜けてくる年代になると、心にスッと入り込んでくるのだろうという予感はありますね。

コメントの投稿

管理者にのみコメントを公開する

10,000HIT御礼。 | BLOG TOP | 初味寿司 本店(福井市) ~福井の魚市場は、実は結構面白いらしい。


QRコード
 このブログのQRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。